Niceな人生案内

下記引用の相談と回答、一見すると突っ込みどころがいくつもありそうにも見えますが、「人は変われる」というのが、その人の資質の中に眠っていた要素を浮かび上がらせて膨らませるイメージ、というようなニュアンスであるのなら、この回答はなかなかNiceなのでは? と。
勿論、資質の中にお目当ての要素が一欠片も見当たらない場合は・・・残念ながら膨らませることは出来ないとも言えますが(シャボン玉を…という場合、水と石鹸 &(砂糖or片栗粉or糊など)がないと、という感じでしょうか)。

引用元:2014年2月17日付読売新聞「人生案内」
「何もかもただ面倒くさい」

人間・男・50代。ただ、ただ、毎日が面倒くさい。
口から出る言葉は、嫌だ、面倒くさい、疲れる。それでも腹は減る。食べてしまう。食べるのは、パンとバナナ、時々、納豆、豆腐。
昨年はひどい腹痛で救急で運ばれた。痛いことは嫌だ。苦しいことは、もうこりごりだ。
自分で死ぬのは苦しいだろう。それに、そうする力もなく、ただ、それすら、面倒くさい、と。
人間も地球も、もうこりごり。3000年眠りたい。3000年後の世界を見てみたいと考えた時もあったが、今は、ただ、ただ、毎日をやり過ごして、ただ食って眠るだけ。
地球に、自分の体に大隕石でも落ちて、すべてが終わりになればよいと、考えながら眠りに就く毎日。
何を相談しているのかもわからない。こんな人間。このハガキも投げやりの勢いで、ようやく出す。死ぬこともできず、ただ、ただ、やり過ごす毎日。


まるで一編の詩を読むような独特の美文にまず引かれました。ただ、その内容はかなり深刻です。きっと何かのひどい体験で深く傷つけられてしまったものと推察されますが、それが具体的に書いてない。これはどう人生案内してよいものか、正直戸惑いました。
しかし、考えてみると人間なぜ面倒くさがりもせず生きているのか……。そちらの方が不思議な気もしないでもない。私の見るところでは、多くの人間はここをどうにかごまかして暮らしているように思えます。
ある哲学者によれば、人間の生きる理由には「快楽」「倫理」「信仰」の3段階があるそうです。つまり、「楽しいことを求めて」「世のため、人のために」「神様の救いを信じて」の3種の生きがいですね。まあこれをヒントにすれば、このどれか、自分のレベルに合った生きがいを開発すればよいように思えます。
あなたは「そんな面倒なことできるか!」と言われるかもしれない。でも、ここに相談されたこと、私のややこしい文章をここまで読んでいただけたことだけを見ても、あなたの生活のエネルギーが完全に枯渇しているようには思えないのですが……。
野村総一郎(精神科医)

MEMO
Exposure:0.04s (1/25)、Aperture:f/6.3、ISO:640、+0.3EV