汚(けが)れない糸

僕が人に対して想いを寄せる時っていうのは、いくつかのパターンがあるんだ。

その中には、恋人と呼べる間柄だった人に対する想いも含まれるけど、そうじゃない場合もあってさ。
恋人だったというからには、付き合ったり同棲したりっていう経緯があるから、その間にいろいろなことを知るよね。
だから、愛情らしきものも自然に生まれたりするとは思うんだ。

ただ、そうじゃないパターンもあるんだよね。
たとえばこういう事があったんだ。もうだいぶ前の事だけど、僕は友だちの車の助手席に座ってボーッと外を眺めていたんだ。

でね、ある街(都会から離れたところによくできる新興住宅地)を車が通っていた時、スクランブル交差点の赤信号で1~2分程止まっていたんだよね。
その時、なにげなく視線を歩道のほうに移すと、たぶん中学生位だと思われる女の子が自転車に乗って、信号待ちをしてたんだ。

最初は、あぁ中学生位だな、あの子、っていう程度にしか思わなかったんだけど、信号待ちの間に目が合っちゃって、別に僕も目をそらさなかったし、その子も目をそらさなかった。
時間にしたら、20~30秒くらいかな。

まぁ、でもこういう出会い頭みたいのって、別にその子じゃなくても街を歩いていたりすればないわけじゃないよね。
でもね、なんだか妙にその子のことが気になったんだ。

車は当然のことながら信号が青になったら走りだすから、その子ともそこで”サヨナラ”。

でも、僕は、車が走り去った後も気になって仕方なかったから、あの子はたぶんどこかからあの街に引っ越してきて、車の窓から見えたあの住宅地の一角に今は住んでいて、たぶんこんな感じの部屋で、で、親との会話は…と延々と想像をめぐらしていたんだ。

こういうのってある種の人間観察、か、ちょっとした想像ゲームみたいなものだよね、普通は。

だけど、僕は、その子のことを今でも覚えているし、なぜだか気になるんだ。時々、眠りにつく前にベッドに横たわりながら思い出したりすることもあるし。

あの子、もうあれから何年も経っているから今はこれぐらいの歳で、うーん、どこかで幸せに暮らしているんだろうか? ってそんな感じ。

きっと、一生忘れないと思うよ、その子のことは。
ただ単に、車の窓のこちら側とあちら側で目と目とが合っただけなのにね。

もちろん、その子はそんな事忘れちゃってるだろうけど、だからって僕は悲しいとは思わないし、むしろ自然なことだろうって思うんだ。

written by My …

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